残酷な描写あり
R-15
強烈な一撃
――ガッ!!
レンの攻撃は的確だった。
一つ誤算があるとすれば、ドラゴンはヘビやトカゲではない。
腹部は比較的細かい鱗によって可動範囲を削らず、水や空気の抵抗を減らすための滑らかさや柔軟性がある。
ドラゴンに至ってはそれがない。
厳密にはあるのだが、トカゲやヘビと違って狭い隙間を縫うような柔軟性が必要無いので進化の名残で外見だけ残っている。
全身が堅牢な鱗に護られているドラゴンの腹部に攻撃を当てた瞬間、レンの魔道具は砕け、反動で吹き飛ばされてしまう。
そのまま岩に激突し、レンはピクリとも動かなくなってしまい、リコは目を見開いて口をパクパクさせる。
気絶したレンをエサだと認識し、ズラリと並んだノコギリのような歯をレンに向ける。
「だ……だめ……!レンくんを……傷つけるのは……!やめてーっ!!」
リコの身体の中から莫大な魔力が放出され、岩石地帯の岩を砕いていく。
ドラゴンにも匹敵するその魔力は警戒の意識をレンからリコへと移動させるのは容易いものだった。
リコは荒ぶる魔力を撒き散らし、ドラゴンの元へ歩いていく。
「ちょ!?何を考えてんのよ!アンタ死ぬわよ!?」
「レン君を助けるためなら、私の命なんて知らないです……!止めないでください……!」
「……ッ!」
リコの覚悟の表情を見たサクラは怯んでしまい、後退りする。
ドラゴンが振り向いた瞬間、その顎門がリコを捉えて迫っていた。
「『大気の鉄槌』」
リコの魔法はレンから借りていた杖によって発動されたものだったが、恐ろしい速さでドラゴンの横顔を吹き飛ばし、数メートル先の岩山に磔にした。
持っていた魔道具は粉々に砕け散り、もう一つの杖型魔道具を取り出して構える。
「『地龍のあ――』」
「ちょっと待ったーっ!」
上空から現れたレプレはリコの前に両手を広げて立ち塞がる。
しかし、リコの顔を見た瞬間、怯んでしまう。
リコはレプレに牙を向けていたのだ。
それに気づいたサクラはリコのマズルを掴み頭を押さえつけて伏せさせる。
「レプレ様!ご無礼をいたしまして申し訳ございませんでした……!この者はドラゴンによってレンを傷つけられそうになって錯乱しておりました……!どうか……どうかお赦しいただけませんでしょうか……!」
「大丈夫。ちょっとびっくりしただけ……。それより、あのワイバーンをあそこまで追い詰めると思わなかったよ。あとは任せて?」
レプレはそれ以上リコの行動に言及せず、岩山に磔にされたドラゴン――もといワイバーンの側に行く。
『コテンパンにされてどんな気持ち?』
レプレは突然レンたちにはわからない言葉を話し始め、驚くが、どら
『貴様……私たちの言葉がわかるのか……!?』
『分かるも何も、ウチは父親が竜人族だもの。竜族の言葉くらい嗜んでいるわ』
『矮小な種族のくせに我らの同胞の血を持つか……。それで、一体何の用だ。我らの縄張りに入るという事はそれなりの要件なんだろうな?』
『矮小な種族……ねぇ』
レプレはリコが落ち着いてレンを看病している姿を確認すると、黒い棒を取り出し、槍状にする。
髪の色がみるみる銀色へと変貌し、ワイバーンはその姿を見て驚く。
『貴様……神の使いか……!?』
『使いも何も、月兎は神と同列よ?それと、アナタは今からウチの下僕だから。【我は竜の血を纏し者。月の神の力にひれ伏し我に従え】』
魔力の縄がワイバーンに襲いかかり、前後の足全てと口を縛り付けて地面に押し付ける。
魔力により身体のコントロールを奪われてしまい、身動き一つ取る事ができなかった。
その状況でレプレはワイバーンの鼻先に軽くキスをする。
「「!?」」
多感な時期である彼女達にすると少々刺激的なものだが、レプレは至って真面目であった。
魔力を込めたキスはワイバーンの心を完全に奪い、大人しくなる。
「『我は竜に乗る者。彼の竜に魔法装具を付けよ』」
レプレの言葉に反応したワイバーンは自身の魔力を使い、鞍と荷台を背中に装着していく。
サクラはレプレの行動を見て、驚きのあまり立ち上がる。
「ドラゴン……ライダー……!?」
「……何ですかそれは?」
「飛竜を使役して戦う魔法を持ってる人を総称してそう呼んでるの……。竜語を話すのは竜人族しかいないから殆ど廃れているんだけど、レプレ様が竜語を話せるなんて……。しかも飛竜を操ることまで出来るのは凄いヒトってこと……」
リコはそれ以上の事に興味がないのか、レンの看病に戻る。
一方サクラはレプレの元へ駆け寄り、使役したワイバーンを眺める。
「カッコいいでしょ?ワイバーンはかっこいいからね。これで、現地までひとっ飛びで帰りも楽々だよ!」
「レプレ様はもしかして、移動手段を確保するためにここに来たのですか?」
「うん。ついでにキミたちの戦闘能力向上のために少し戦わせてみたかったのもある!」
「アタシは……何もできませんでした……。レン君が戦ってくれなかったら、全滅してたかもしれなかった……」
レプレは「うんうん」と言いながら頷く。
現状、魔獣に対しても有効打を与えられていない事にサクラは落ち込んでしまい、リコに対して劣等感を強く抱いてしまうのだった。
レンの攻撃は的確だった。
一つ誤算があるとすれば、ドラゴンはヘビやトカゲではない。
腹部は比較的細かい鱗によって可動範囲を削らず、水や空気の抵抗を減らすための滑らかさや柔軟性がある。
ドラゴンに至ってはそれがない。
厳密にはあるのだが、トカゲやヘビと違って狭い隙間を縫うような柔軟性が必要無いので進化の名残で外見だけ残っている。
全身が堅牢な鱗に護られているドラゴンの腹部に攻撃を当てた瞬間、レンの魔道具は砕け、反動で吹き飛ばされてしまう。
そのまま岩に激突し、レンはピクリとも動かなくなってしまい、リコは目を見開いて口をパクパクさせる。
気絶したレンをエサだと認識し、ズラリと並んだノコギリのような歯をレンに向ける。
「だ……だめ……!レンくんを……傷つけるのは……!やめてーっ!!」
リコの身体の中から莫大な魔力が放出され、岩石地帯の岩を砕いていく。
ドラゴンにも匹敵するその魔力は警戒の意識をレンからリコへと移動させるのは容易いものだった。
リコは荒ぶる魔力を撒き散らし、ドラゴンの元へ歩いていく。
「ちょ!?何を考えてんのよ!アンタ死ぬわよ!?」
「レン君を助けるためなら、私の命なんて知らないです……!止めないでください……!」
「……ッ!」
リコの覚悟の表情を見たサクラは怯んでしまい、後退りする。
ドラゴンが振り向いた瞬間、その顎門がリコを捉えて迫っていた。
「『大気の鉄槌』」
リコの魔法はレンから借りていた杖によって発動されたものだったが、恐ろしい速さでドラゴンの横顔を吹き飛ばし、数メートル先の岩山に磔にした。
持っていた魔道具は粉々に砕け散り、もう一つの杖型魔道具を取り出して構える。
「『地龍のあ――』」
「ちょっと待ったーっ!」
上空から現れたレプレはリコの前に両手を広げて立ち塞がる。
しかし、リコの顔を見た瞬間、怯んでしまう。
リコはレプレに牙を向けていたのだ。
それに気づいたサクラはリコのマズルを掴み頭を押さえつけて伏せさせる。
「レプレ様!ご無礼をいたしまして申し訳ございませんでした……!この者はドラゴンによってレンを傷つけられそうになって錯乱しておりました……!どうか……どうかお赦しいただけませんでしょうか……!」
「大丈夫。ちょっとびっくりしただけ……。それより、あのワイバーンをあそこまで追い詰めると思わなかったよ。あとは任せて?」
レプレはそれ以上リコの行動に言及せず、岩山に磔にされたドラゴン――もといワイバーンの側に行く。
『コテンパンにされてどんな気持ち?』
レプレは突然レンたちにはわからない言葉を話し始め、驚くが、どら
『貴様……私たちの言葉がわかるのか……!?』
『分かるも何も、ウチは父親が竜人族だもの。竜族の言葉くらい嗜んでいるわ』
『矮小な種族のくせに我らの同胞の血を持つか……。それで、一体何の用だ。我らの縄張りに入るという事はそれなりの要件なんだろうな?』
『矮小な種族……ねぇ』
レプレはリコが落ち着いてレンを看病している姿を確認すると、黒い棒を取り出し、槍状にする。
髪の色がみるみる銀色へと変貌し、ワイバーンはその姿を見て驚く。
『貴様……神の使いか……!?』
『使いも何も、月兎は神と同列よ?それと、アナタは今からウチの下僕だから。【我は竜の血を纏し者。月の神の力にひれ伏し我に従え】』
魔力の縄がワイバーンに襲いかかり、前後の足全てと口を縛り付けて地面に押し付ける。
魔力により身体のコントロールを奪われてしまい、身動き一つ取る事ができなかった。
その状況でレプレはワイバーンの鼻先に軽くキスをする。
「「!?」」
多感な時期である彼女達にすると少々刺激的なものだが、レプレは至って真面目であった。
魔力を込めたキスはワイバーンの心を完全に奪い、大人しくなる。
「『我は竜に乗る者。彼の竜に魔法装具を付けよ』」
レプレの言葉に反応したワイバーンは自身の魔力を使い、鞍と荷台を背中に装着していく。
サクラはレプレの行動を見て、驚きのあまり立ち上がる。
「ドラゴン……ライダー……!?」
「……何ですかそれは?」
「飛竜を使役して戦う魔法を持ってる人を総称してそう呼んでるの……。竜語を話すのは竜人族しかいないから殆ど廃れているんだけど、レプレ様が竜語を話せるなんて……。しかも飛竜を操ることまで出来るのは凄いヒトってこと……」
リコはそれ以上の事に興味がないのか、レンの看病に戻る。
一方サクラはレプレの元へ駆け寄り、使役したワイバーンを眺める。
「カッコいいでしょ?ワイバーンはかっこいいからね。これで、現地までひとっ飛びで帰りも楽々だよ!」
「レプレ様はもしかして、移動手段を確保するためにここに来たのですか?」
「うん。ついでにキミたちの戦闘能力向上のために少し戦わせてみたかったのもある!」
「アタシは……何もできませんでした……。レン君が戦ってくれなかったら、全滅してたかもしれなかった……」
レプレは「うんうん」と言いながら頷く。
現状、魔獣に対しても有効打を与えられていない事にサクラは落ち込んでしまい、リコに対して劣等感を強く抱いてしまうのだった。