残酷な描写あり
R-15
訪問者
魔法競技祭が終わり、平穏な日常が戻ったレン。
しかし、新たな問題に直面していた。
それはリコとサクラの事だった。
二人は兎に角反りが合わない様子で、何かあると直ぐにレンを巻き込むのだ。
レン自身、どのような回答をすれば良いのか分からないものが多く、正直困っていた。
メリルに助けを求めても、「そればかりはどうしようもならないな」と一蹴され参ってしまう。
そんな時、魔工部に来客が訪れる。
「邪魔するぞ」
「おじゃましまーす」
狼族の男性と兎族の女性が部室に入る。
するとメリルが二人の前に立ち、跪く。
レンたちはどういう事なのか目を合わせて首を傾げると、メリルは手合図で同じように跪くように命じる。
三人は片膝をついて頭を下げるとメリルが口を開く。
「こんなところにいらして頂きありがとうございます。ガブ様、レプレ夫人。本日はどう言ったご用件で?」
「そんなに畏まらなくて良い。今日来たのは調査の要請だ。だから調査隊での対応にしてくれ。めえさん」
調査隊での対応を要望されたメリルは立ち上がり、腰に手を当てる。
「お前がそのような事をいうのは珍しいな。何かあったのか?」
「ここから軽く走って二日の場所に元集落があって、そこを探索していたんだ。そうしたら封印が施された箱があって、中身を確認しようにも出来なかった。まあ、魔物によって滅んだ集落だし、きっと重要ではないとは思うが、気になってな」
「封印……。そういう事なら私かふく様しか【開錠】を使えないから仕方がないな。場所はどこだ?」
ガブは地図を広げ、メモをした場所に指を指す。
すると、メリルの表情が一気に曇る。
眉間にシワを寄せ、後頭部を掻く。
ガブは腕を組んで口を開こうとすると、思わぬ人物から発言が出る。
「先生!オレに……オレたちに任せられる内容ですか?」
「……!」
「レン、これは未熟なお前たちではまだ困難を極める。任せることはできない」
メリルが任せられないという時は戦闘が絡む時である。
魔法競技祭以降訓練を積んでいないのだ。
レンは魔道具の製作練度を、リコは紋章魔法で結合の練習、サクラは紋章魔法の基本を学んでいる最中だった。
机に向かうだけでは強くなれないためメリルの言うことは尤もである。
しかし、レンは引き下がりたくなかった。
――だって、ここは……オレの生まれた地だもん……!
レンは困難だとわかっていても自分のルーツと呼べる場所に拳を握りしめる。
それを見たレプレは一歩前に出て胸をドンと叩く。
「お姉さんが一緒に行ってあげる!保護者がいれば問題ないんでしょ?」
「おい、レプレ……」
「うさ子、お前も王族の一員なのだから勝手はできないんだぞ?」
「いいのいいの!うちは調査してる方が楽しいし。あ、一応保険で【あの魔法】の解禁を許してね。それはそうと……そこのねこ君、封印はどうやって開けるの?」
「これから魔道具を作って、それで代用します……!」
「【開錠】の魔道具はオクト君は大きくなるから作らないみたいだけど、キミは作れるの?」
レプレの指摘にレンは一瞬怯んだが、大きく首を縦に振り、強い意志のこもった目をレプレに向ける。
「やってみせます……!オレの目標はポチおさんみたいな……いや、ポチおさんを超えるような魔法技術士になりたいんです!」
「はい、決定!さぁ準備したら行っくよ~!」
「あ、あの……明日とかじゃないんですか?」
サクラの質問に対し、何も疑問を覚えず頷く。
「だって、思い立ったが吉日って言うでしょ?善は急げとも。ガブさんが走って二日だよ?うちらが歩いたら一週間はかかるよ」
「その間の食料はどうするつもりだ?この子達はまだ未成獣だぞ」
「ほえ?大丈夫だよ?そのあたりはきちんと教えるから。ほらほらねこくん。魔道具作って」
レンはレプレに急かされ、急いで魔道具の準備をする。
今回純ミスリルで作る魔道具である。
単一の素材で魔道具を作るのは難易度が高いものの、できたときの強度が段違いであることがわかった。
レンは魔法競技祭で負けたときから一度も休まずに魔道具の勉強を欠かさなかった。
メリルから分厚い魔導書【魔法大全】を受取り、【開錠】の魔法が記載されているページを引く。
紙に【結合】の紋章を描き、その上にバケツいっぱいのミスリル鉄鉱を乗せ、空中に【開錠】の紋章を描いていく。
「『神々の恩寵を受けた素材たちよ。全てを結びつける力を以って、互いに手を取り合え。開錠の力を込められしその装具は我らの力と成せ!』」
眩い光が部室を支配し、レン以外は手で目を覆う。
光が収まると、細い鍵状の魔道具が出来上がっていた。
レンはそれを手に取り、納得の出来だったのか頷く。
レプレは不思議そうにレンの作った魔道具を眺める。
「ねえ、コレって紋章魔法だよね?どうして魔道具にできたの?」
「えぇっと……実はなんで上手くいったのか自分でもわからないんです。初めて作ったときも死にそうな状況だったので……」
「ふぅん……。ま、オクトちんしか理解んないだろうからいいや。さ!行くぞー!」
レンたちは流れるようにレプレに連れて行かれてしまった。
取り残されたメリルとガブは、同時にため息を吐くことしかできなかったのであった。
しかし、新たな問題に直面していた。
それはリコとサクラの事だった。
二人は兎に角反りが合わない様子で、何かあると直ぐにレンを巻き込むのだ。
レン自身、どのような回答をすれば良いのか分からないものが多く、正直困っていた。
メリルに助けを求めても、「そればかりはどうしようもならないな」と一蹴され参ってしまう。
そんな時、魔工部に来客が訪れる。
「邪魔するぞ」
「おじゃましまーす」
狼族の男性と兎族の女性が部室に入る。
するとメリルが二人の前に立ち、跪く。
レンたちはどういう事なのか目を合わせて首を傾げると、メリルは手合図で同じように跪くように命じる。
三人は片膝をついて頭を下げるとメリルが口を開く。
「こんなところにいらして頂きありがとうございます。ガブ様、レプレ夫人。本日はどう言ったご用件で?」
「そんなに畏まらなくて良い。今日来たのは調査の要請だ。だから調査隊での対応にしてくれ。めえさん」
調査隊での対応を要望されたメリルは立ち上がり、腰に手を当てる。
「お前がそのような事をいうのは珍しいな。何かあったのか?」
「ここから軽く走って二日の場所に元集落があって、そこを探索していたんだ。そうしたら封印が施された箱があって、中身を確認しようにも出来なかった。まあ、魔物によって滅んだ集落だし、きっと重要ではないとは思うが、気になってな」
「封印……。そういう事なら私かふく様しか【開錠】を使えないから仕方がないな。場所はどこだ?」
ガブは地図を広げ、メモをした場所に指を指す。
すると、メリルの表情が一気に曇る。
眉間にシワを寄せ、後頭部を掻く。
ガブは腕を組んで口を開こうとすると、思わぬ人物から発言が出る。
「先生!オレに……オレたちに任せられる内容ですか?」
「……!」
「レン、これは未熟なお前たちではまだ困難を極める。任せることはできない」
メリルが任せられないという時は戦闘が絡む時である。
魔法競技祭以降訓練を積んでいないのだ。
レンは魔道具の製作練度を、リコは紋章魔法で結合の練習、サクラは紋章魔法の基本を学んでいる最中だった。
机に向かうだけでは強くなれないためメリルの言うことは尤もである。
しかし、レンは引き下がりたくなかった。
――だって、ここは……オレの生まれた地だもん……!
レンは困難だとわかっていても自分のルーツと呼べる場所に拳を握りしめる。
それを見たレプレは一歩前に出て胸をドンと叩く。
「お姉さんが一緒に行ってあげる!保護者がいれば問題ないんでしょ?」
「おい、レプレ……」
「うさ子、お前も王族の一員なのだから勝手はできないんだぞ?」
「いいのいいの!うちは調査してる方が楽しいし。あ、一応保険で【あの魔法】の解禁を許してね。それはそうと……そこのねこ君、封印はどうやって開けるの?」
「これから魔道具を作って、それで代用します……!」
「【開錠】の魔道具はオクト君は大きくなるから作らないみたいだけど、キミは作れるの?」
レプレの指摘にレンは一瞬怯んだが、大きく首を縦に振り、強い意志のこもった目をレプレに向ける。
「やってみせます……!オレの目標はポチおさんみたいな……いや、ポチおさんを超えるような魔法技術士になりたいんです!」
「はい、決定!さぁ準備したら行っくよ~!」
「あ、あの……明日とかじゃないんですか?」
サクラの質問に対し、何も疑問を覚えず頷く。
「だって、思い立ったが吉日って言うでしょ?善は急げとも。ガブさんが走って二日だよ?うちらが歩いたら一週間はかかるよ」
「その間の食料はどうするつもりだ?この子達はまだ未成獣だぞ」
「ほえ?大丈夫だよ?そのあたりはきちんと教えるから。ほらほらねこくん。魔道具作って」
レンはレプレに急かされ、急いで魔道具の準備をする。
今回純ミスリルで作る魔道具である。
単一の素材で魔道具を作るのは難易度が高いものの、できたときの強度が段違いであることがわかった。
レンは魔法競技祭で負けたときから一度も休まずに魔道具の勉強を欠かさなかった。
メリルから分厚い魔導書【魔法大全】を受取り、【開錠】の魔法が記載されているページを引く。
紙に【結合】の紋章を描き、その上にバケツいっぱいのミスリル鉄鉱を乗せ、空中に【開錠】の紋章を描いていく。
「『神々の恩寵を受けた素材たちよ。全てを結びつける力を以って、互いに手を取り合え。開錠の力を込められしその装具は我らの力と成せ!』」
眩い光が部室を支配し、レン以外は手で目を覆う。
光が収まると、細い鍵状の魔道具が出来上がっていた。
レンはそれを手に取り、納得の出来だったのか頷く。
レプレは不思議そうにレンの作った魔道具を眺める。
「ねえ、コレって紋章魔法だよね?どうして魔道具にできたの?」
「えぇっと……実はなんで上手くいったのか自分でもわからないんです。初めて作ったときも死にそうな状況だったので……」
「ふぅん……。ま、オクトちんしか理解んないだろうからいいや。さ!行くぞー!」
レンたちは流れるようにレプレに連れて行かれてしまった。
取り残されたメリルとガブは、同時にため息を吐くことしかできなかったのであった。