残酷な描写あり
R-15
ひみつ
「さあさあ!ジャンジャカ進むぞ~!」
「ま、待ってくださいよー!」
三人はつかつか歩いていくレプレについていくのがやっとであり、現役の調査隊員の行動力に驚いていた。
レプレに追いつくと突然振り返り、顔を覗き込む。
「ねこくん。名前は?」
「レンです……」
「レン君は何でメリル様にこの調査をしたいって言ったの?言わないであげるから言ってごらん?」
レプレはウサギ族ゆえに身長が低く、レンたちと同い年と言っても見分けがつかない。
そのせいもあってかレンはイマイチ口の紐が硬そうに見えないレプレを警戒するが、ここで連れ返されても嫌だと感じた。
「俺の、故郷……って言ったらいいのかな。父さんと母さんと住んでた場所だったんで……」
「あ……ゴメンね。お姉さんの配慮が足りなかったわ……。十年くらい前の襲撃の時だったね、あそこが襲われたの」
――レン君は私と同じ経験をしていたのでしたか……。
ギュッと服の胸部分を掴み、レンの事を見つめるリコ。
リコもまた十年前の襲撃の被害者でもあるためレンの気持ちがよくわかる。
二人で圧倒的に違うというならば、レンの村は国の中央から少し離れた位置に構えていたため、村ごと無くなってしまったという事。
リコの村は襲撃され、野狐族の数を減らしたものの、国の中央から少しだけ離れた場所のため、村自体の損傷は少なく、現在は復興している。
リコは彼がどうして悲惨な目に遭っているにも関わらず、明るい性格をしているのか分からずにいた。
すると、リコの目の前にレプレの顔が割り込んでくる。
驚きのあまり、牙を見せそうになってしまい、慌てて顔を逸らす。
草食獣人に牙を向けるのは御法度である。
大昔に神であるヴォルフが邪神だと言われていたごろに、散々牙を向けて来た話を聞いた女王のふくがルールとして定めた。
不必要に牙を見せつけて不安を煽るものではないと口酸っぱく言いつけていたという逸話がある。
それを知っているリコは王族の夫人に対して行なってしまいかけた事を気にしていると、クスクスと笑われた。
「何を考えてるのかなぁ?って思ってたら、とても真面目な子だね。野狐族もレンくんと同じように被害を受けたから気にしてる?」
「それは……まあ……。もっと野狐を信頼して欲しかったです。戦うなという命令のせいで、数を減らしてしまったので……」
「そっかぁ。あれはね、ちょっと厄介な魔法をかける魔物でね、野狐族を戦わせるとさらに数を減らしかねないから苦肉の策だったんだ。あの戦場にはウチもいたし、当時の状況はよく覚えてる」
リコはレプレの言う厄介な魔法というものが分からず、レプレの言うことを信用できなかった。
元々最初の国作りの時からいる種族であるにも関わらず、国の政から離された上、他種族との交流を制限されていた事が原因である。
リコ自身も学園に行くまでは他種族との交流はした事がなく、当たり前のマナーも守れずにいた。
その事でリコは孤立していたが、圧倒的な魔力により、首席に成り上がっているため、誰もリコの文句を言うことができずにいた。
「きつねちゃんが何を感じてるか分からないけど、王族の玉藻ちゃんっていう妖狐は信じていいと思うよ?あの子、学園に来るまでは野狐族に育てられてて、実は妖狐でしたっていうパターンだったから」
「妖狐と野狐族は全然違うと思うんですが……。尻尾の数とか……」
「そうかな?共通しているのは三本までは野狐族と変わらないはずだよ?それでも初めて会った時、頬っぺたに王族の証が付いてたのに野狐族だって言うんだよ!面白いでしょ?それだけ野狐族の育ての親が好きだったんだろうね。妖狐の二人はヒトを愛する事に特化してるのかとても愛情深い種族っぽいし。ふく様はヴォルフ様を、玉藻ちゃんはルゥ君のこといっぱい大好きしてるしね♡」
「「え……!?」」
レンとサクラは衝撃の人物の名が挙げられて目を点にしていた。
サクラはレプレに恐る恐る聞いてみることにした。
「あ、あのー……ルゥ君ってまさか学園の先生でカンガルー族の筋肉ムキムキのルゥ先生ですか……?」
「そうだよ!ルゥ君の筋肉は凄いよねぇ。玉藻ちゃんもルゥ君がそばにいる時は安心して戦いに集中できるくらい防御系の魔法が得意だから強いよ〜!」
「玉藻様とルゥ先生が夫婦だったなんて……。思いもしなかった……!」
「え?サム君とめえさまも夫婦だよ?」
「「ええ〜っ!?」」
いろんな事がレプレによって明らかにされていき、レンの不安は現実のものとなりそうだった。
この白兎の女性は口が軽い。
レンの中でそう決定づけられた瞬間であった。
しばらく歩いているとレプレは空を眺めていた。
昼過ぎという時間ではあるが、何を思ったのか岩石地帯の方角へと歩く。
見通しの悪い中、横穴を見つけるとレプレの纏う魔力の雰囲気が変わる。
「戦闘、ですか?」
「よく分かったね。さすが特級クラスのリコちゃんだ。横穴の中に魔獣が住んでる。今日はここを宿にしたいから、コイツを倒さなきゃならないね。早速誘き出して戦うけど、準備はいいかな?」
レンとサクラは突然の戦闘に慌てて準備をする。
カバンの中から杖状の魔道具を二つ取り出し、一つをリコに渡す。
「コレ、多分壊れちゃうけど、使ってくれるかな?」
「いいのですか?」
「うん。壊れたらもっといいもの作るから」
レンの言葉に少し嬉しそうに尻尾を膨らませるリコは大事そうに魔道具を持ち、微笑む。
「壊さないように制御してみせます」
「よーし、それじゃあ今日の晩ご飯を狩りますか!」
「「「!?」」」
レプレの掛け声に三人はギョッとした表情でレプレを見る。
その瞬間、レンの五倍ほどの高さのある横穴から穴と同じサイズの体躯をした魔獣がのっそりと現れたのだった。
「ま、待ってくださいよー!」
三人はつかつか歩いていくレプレについていくのがやっとであり、現役の調査隊員の行動力に驚いていた。
レプレに追いつくと突然振り返り、顔を覗き込む。
「ねこくん。名前は?」
「レンです……」
「レン君は何でメリル様にこの調査をしたいって言ったの?言わないであげるから言ってごらん?」
レプレはウサギ族ゆえに身長が低く、レンたちと同い年と言っても見分けがつかない。
そのせいもあってかレンはイマイチ口の紐が硬そうに見えないレプレを警戒するが、ここで連れ返されても嫌だと感じた。
「俺の、故郷……って言ったらいいのかな。父さんと母さんと住んでた場所だったんで……」
「あ……ゴメンね。お姉さんの配慮が足りなかったわ……。十年くらい前の襲撃の時だったね、あそこが襲われたの」
――レン君は私と同じ経験をしていたのでしたか……。
ギュッと服の胸部分を掴み、レンの事を見つめるリコ。
リコもまた十年前の襲撃の被害者でもあるためレンの気持ちがよくわかる。
二人で圧倒的に違うというならば、レンの村は国の中央から少し離れた位置に構えていたため、村ごと無くなってしまったという事。
リコの村は襲撃され、野狐族の数を減らしたものの、国の中央から少しだけ離れた場所のため、村自体の損傷は少なく、現在は復興している。
リコは彼がどうして悲惨な目に遭っているにも関わらず、明るい性格をしているのか分からずにいた。
すると、リコの目の前にレプレの顔が割り込んでくる。
驚きのあまり、牙を見せそうになってしまい、慌てて顔を逸らす。
草食獣人に牙を向けるのは御法度である。
大昔に神であるヴォルフが邪神だと言われていたごろに、散々牙を向けて来た話を聞いた女王のふくがルールとして定めた。
不必要に牙を見せつけて不安を煽るものではないと口酸っぱく言いつけていたという逸話がある。
それを知っているリコは王族の夫人に対して行なってしまいかけた事を気にしていると、クスクスと笑われた。
「何を考えてるのかなぁ?って思ってたら、とても真面目な子だね。野狐族もレンくんと同じように被害を受けたから気にしてる?」
「それは……まあ……。もっと野狐を信頼して欲しかったです。戦うなという命令のせいで、数を減らしてしまったので……」
「そっかぁ。あれはね、ちょっと厄介な魔法をかける魔物でね、野狐族を戦わせるとさらに数を減らしかねないから苦肉の策だったんだ。あの戦場にはウチもいたし、当時の状況はよく覚えてる」
リコはレプレの言う厄介な魔法というものが分からず、レプレの言うことを信用できなかった。
元々最初の国作りの時からいる種族であるにも関わらず、国の政から離された上、他種族との交流を制限されていた事が原因である。
リコ自身も学園に行くまでは他種族との交流はした事がなく、当たり前のマナーも守れずにいた。
その事でリコは孤立していたが、圧倒的な魔力により、首席に成り上がっているため、誰もリコの文句を言うことができずにいた。
「きつねちゃんが何を感じてるか分からないけど、王族の玉藻ちゃんっていう妖狐は信じていいと思うよ?あの子、学園に来るまでは野狐族に育てられてて、実は妖狐でしたっていうパターンだったから」
「妖狐と野狐族は全然違うと思うんですが……。尻尾の数とか……」
「そうかな?共通しているのは三本までは野狐族と変わらないはずだよ?それでも初めて会った時、頬っぺたに王族の証が付いてたのに野狐族だって言うんだよ!面白いでしょ?それだけ野狐族の育ての親が好きだったんだろうね。妖狐の二人はヒトを愛する事に特化してるのかとても愛情深い種族っぽいし。ふく様はヴォルフ様を、玉藻ちゃんはルゥ君のこといっぱい大好きしてるしね♡」
「「え……!?」」
レンとサクラは衝撃の人物の名が挙げられて目を点にしていた。
サクラはレプレに恐る恐る聞いてみることにした。
「あ、あのー……ルゥ君ってまさか学園の先生でカンガルー族の筋肉ムキムキのルゥ先生ですか……?」
「そうだよ!ルゥ君の筋肉は凄いよねぇ。玉藻ちゃんもルゥ君がそばにいる時は安心して戦いに集中できるくらい防御系の魔法が得意だから強いよ〜!」
「玉藻様とルゥ先生が夫婦だったなんて……。思いもしなかった……!」
「え?サム君とめえさまも夫婦だよ?」
「「ええ〜っ!?」」
いろんな事がレプレによって明らかにされていき、レンの不安は現実のものとなりそうだった。
この白兎の女性は口が軽い。
レンの中でそう決定づけられた瞬間であった。
しばらく歩いているとレプレは空を眺めていた。
昼過ぎという時間ではあるが、何を思ったのか岩石地帯の方角へと歩く。
見通しの悪い中、横穴を見つけるとレプレの纏う魔力の雰囲気が変わる。
「戦闘、ですか?」
「よく分かったね。さすが特級クラスのリコちゃんだ。横穴の中に魔獣が住んでる。今日はここを宿にしたいから、コイツを倒さなきゃならないね。早速誘き出して戦うけど、準備はいいかな?」
レンとサクラは突然の戦闘に慌てて準備をする。
カバンの中から杖状の魔道具を二つ取り出し、一つをリコに渡す。
「コレ、多分壊れちゃうけど、使ってくれるかな?」
「いいのですか?」
「うん。壊れたらもっといいもの作るから」
レンの言葉に少し嬉しそうに尻尾を膨らませるリコは大事そうに魔道具を持ち、微笑む。
「壊さないように制御してみせます」
「よーし、それじゃあ今日の晩ご飯を狩りますか!」
「「「!?」」」
レプレの掛け声に三人はギョッとした表情でレプレを見る。
その瞬間、レンの五倍ほどの高さのある横穴から穴と同じサイズの体躯をした魔獣がのっそりと現れたのだった。