残酷な描写あり
R-15
学園に帰ってきた!
翌日、【太陽】が夜を迎えようとしたごろにレンたちは学園の中庭に降り立つ。
部活動も終了し、ほとんどの生徒が寮の自室に戻るか食堂で夕飯を食べるなどの寛ぎの時間であったため、ワイバーンのことを気づかれることがなかった。
ワイバーンの魔力に気づいていた教師たちは中庭に集まり、戦闘体勢をとっていた。
「ワイバーンを空に飛ばさせるな!私がいる限りお前たちの命は守る!だから攻撃に専念するんだ!」
メリルが鎌の魔道具を展開し、号令をかけようとした瞬間、レンが荷台から顔をひょっこりと出す。
「レン!?」
「めえ先生!ただいま戻りました!」
「……うさ子め。飛竜に乗っていくとは聞いていないぞ……!」
メリルの怒気が鞍に向けられて発せられる。
身長の低いレプレはワイバーンの陰に上手く隠れてメリルとの対面を避ける。
そんな様子を見た三人は苦笑いを浮かべながら、会釈し、ワイバーンから降りる。
すると、ワイバーンは上体を起こし、翼を広げる。
『ゴーッ!』
「あ!?うさ子!!逃げたか……」
メリルの制止を振り切ったレプレはワイバーンと共に上空へと逃げていった。
悔しそうな表情を浮かべ、小さくなっていくレプレを睨むが、レンたちの事を思い出し振り向くと三人は疲れた表情で座り込んでいた。
「おかえり」
「無事に戻りました……!」
「ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした」
「いっぱい体験できて楽しかったです!」
三人はそれぞれ報告をする。
その中でレンの表情を見たメリルはレンの前に座り、目線を合わせる。
じいっと見つめ、レンはだんだんと緊張してくる。
そんな様子に気付いたメリルは「ふふん」と鼻で笑う。
「レン、何かいい事があったのか?」
「……父さんと母さんの形見を見つけたんです」
「……うさ子の行っていたところはお前の故郷だったのか。どんな物だったんだ?」
レンは大事そうに握りしめていた石をメリルに見せると不思議そうな顔をしてそれを見つめる。
「見たことのない魔石だな」
「これ、魔道具なんです。父さんは魔法技術士で紋章魔法の封印を主にやってたみたいで、それは死ぬ直前にできた試作品だそうです」
「ふむ……。ならばお前が作っている魔道具と何か違う特性があってもおかしくないだろうな。発動はしてみたのか?」
レンは首を横に振る。
「中身が分からないんです」
「そうか……。明日、【分析】の魔道具を使って中の魔法が何か確かめてみよう。今日はお前たちはしっかりと休む事が先決だ」
三人は学園に帰ってきたことで興奮し、時間の感覚を忘れていたようで夜を迎え、中庭が暗くなっている事に気がついた。
メリルは深く頷き、本日は解散となった。
三人は寮棟の入り口を開け、男子寮と女子寮の分かれ道にたどり着く。
「ふわぁぁぁ……レンくん、リコ……さん。おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
「はい、また明日」
サクラは大きな欠伸をし、手をひらひらと振りながら自室へと帰っていった。
残った二人は少しの間無言で見つめ合う。
リコの方が背が高く、レンは少し見上げる形になるのだが、リコは不思議とレンのことが大きく見えるように感じていた。
――なんだか、初めて会った時よりも大人に近付いているのでしょうか?
「ど、どうしたの?そんな見られたらちょっと恥ずかしいかも……」
少し照れながら伝えると、リコは得意そうな表情を浮かべて口を開く。
「いえ、今のレン君は少し大人に見えた気がしまして……」
「そ、そうかなぁ……?」
「はい。あと、ワイバーンと戦っている時のレン君、とてもカッコよかったです。もし、魔道具がもっといいものを作れたら勝てたかもしれないですね」
「いやいや……!結局負けてしまったわけだし、リコさんがいなきゃ、死んでたし……ね?」
レンは乾いた笑いをしながらそう答えるとリコの手がレンの手を掴む。
レンの心臓が高く跳ねた気がした。
レンの手の中に細長いものがねじ込まれ、それを見ると壊れた魔道具の持ち手だった。
これはリコに渡した風の紋章が封じ込められた杖の魔道具だった。
「レン君は壊れた魔道具も材料にしましたよね?だから返しておきます」
「覚えててくれたんだ……。ありがとう……!」
レンは自分の作業方法を覚えてもらえていたことが嬉しくなり、尻尾がまっすぐ天に向かって伸びた。
そして、次第に緊張を示すように忙しなく尻尾が振られる。
レンは迷っていたが、いつまでも内に秘めても仕方がないと思い、声を振り絞った。
「り、リコさんは……好きなヒト……いる……?」
レンの質問に驚いた表情を一瞬だけ浮かべるが、またいつもの感情が読めない表情に戻る。
「そうですね……。まだ、好きなのかどうかはわかりません。ですが、たくさんお話ししたい方ならいます。正確な答えにならず申し訳ございません」
「い、いや!リコさんが謝ることなんかないよ!?ビックリだよね〜!こんな質問いきなりされたら……!も、もう遅いからそろそろ帰ろう!明日も授業があるし……!」
レンは気づいていないがリコは少しだけ寂しそうな表情を浮かべていた。
しかし、レンの言う通り明日から授業が始まる。
そのためには早めに休み、疲れを癒す必要があった。
リコはもう少しお話ししたいという欲求を抑え込み、レンの顔を見る。
「そうですね。また明日部活でお会いしましょう。おやすみなさい、レン君」
「うん……!また明日ね、リコさん」
二人は煮え切らない気持ちで分かれ道を進み、それぞれの自室へと帰っていった。
その日は疲れがドッと出たのだろう。
ベッドの上に伏せると、あっという間に朝になってしまったのだった。
部活動も終了し、ほとんどの生徒が寮の自室に戻るか食堂で夕飯を食べるなどの寛ぎの時間であったため、ワイバーンのことを気づかれることがなかった。
ワイバーンの魔力に気づいていた教師たちは中庭に集まり、戦闘体勢をとっていた。
「ワイバーンを空に飛ばさせるな!私がいる限りお前たちの命は守る!だから攻撃に専念するんだ!」
メリルが鎌の魔道具を展開し、号令をかけようとした瞬間、レンが荷台から顔をひょっこりと出す。
「レン!?」
「めえ先生!ただいま戻りました!」
「……うさ子め。飛竜に乗っていくとは聞いていないぞ……!」
メリルの怒気が鞍に向けられて発せられる。
身長の低いレプレはワイバーンの陰に上手く隠れてメリルとの対面を避ける。
そんな様子を見た三人は苦笑いを浮かべながら、会釈し、ワイバーンから降りる。
すると、ワイバーンは上体を起こし、翼を広げる。
『ゴーッ!』
「あ!?うさ子!!逃げたか……」
メリルの制止を振り切ったレプレはワイバーンと共に上空へと逃げていった。
悔しそうな表情を浮かべ、小さくなっていくレプレを睨むが、レンたちの事を思い出し振り向くと三人は疲れた表情で座り込んでいた。
「おかえり」
「無事に戻りました……!」
「ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした」
「いっぱい体験できて楽しかったです!」
三人はそれぞれ報告をする。
その中でレンの表情を見たメリルはレンの前に座り、目線を合わせる。
じいっと見つめ、レンはだんだんと緊張してくる。
そんな様子に気付いたメリルは「ふふん」と鼻で笑う。
「レン、何かいい事があったのか?」
「……父さんと母さんの形見を見つけたんです」
「……うさ子の行っていたところはお前の故郷だったのか。どんな物だったんだ?」
レンは大事そうに握りしめていた石をメリルに見せると不思議そうな顔をしてそれを見つめる。
「見たことのない魔石だな」
「これ、魔道具なんです。父さんは魔法技術士で紋章魔法の封印を主にやってたみたいで、それは死ぬ直前にできた試作品だそうです」
「ふむ……。ならばお前が作っている魔道具と何か違う特性があってもおかしくないだろうな。発動はしてみたのか?」
レンは首を横に振る。
「中身が分からないんです」
「そうか……。明日、【分析】の魔道具を使って中の魔法が何か確かめてみよう。今日はお前たちはしっかりと休む事が先決だ」
三人は学園に帰ってきたことで興奮し、時間の感覚を忘れていたようで夜を迎え、中庭が暗くなっている事に気がついた。
メリルは深く頷き、本日は解散となった。
三人は寮棟の入り口を開け、男子寮と女子寮の分かれ道にたどり着く。
「ふわぁぁぁ……レンくん、リコ……さん。おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
「はい、また明日」
サクラは大きな欠伸をし、手をひらひらと振りながら自室へと帰っていった。
残った二人は少しの間無言で見つめ合う。
リコの方が背が高く、レンは少し見上げる形になるのだが、リコは不思議とレンのことが大きく見えるように感じていた。
――なんだか、初めて会った時よりも大人に近付いているのでしょうか?
「ど、どうしたの?そんな見られたらちょっと恥ずかしいかも……」
少し照れながら伝えると、リコは得意そうな表情を浮かべて口を開く。
「いえ、今のレン君は少し大人に見えた気がしまして……」
「そ、そうかなぁ……?」
「はい。あと、ワイバーンと戦っている時のレン君、とてもカッコよかったです。もし、魔道具がもっといいものを作れたら勝てたかもしれないですね」
「いやいや……!結局負けてしまったわけだし、リコさんがいなきゃ、死んでたし……ね?」
レンは乾いた笑いをしながらそう答えるとリコの手がレンの手を掴む。
レンの心臓が高く跳ねた気がした。
レンの手の中に細長いものがねじ込まれ、それを見ると壊れた魔道具の持ち手だった。
これはリコに渡した風の紋章が封じ込められた杖の魔道具だった。
「レン君は壊れた魔道具も材料にしましたよね?だから返しておきます」
「覚えててくれたんだ……。ありがとう……!」
レンは自分の作業方法を覚えてもらえていたことが嬉しくなり、尻尾がまっすぐ天に向かって伸びた。
そして、次第に緊張を示すように忙しなく尻尾が振られる。
レンは迷っていたが、いつまでも内に秘めても仕方がないと思い、声を振り絞った。
「り、リコさんは……好きなヒト……いる……?」
レンの質問に驚いた表情を一瞬だけ浮かべるが、またいつもの感情が読めない表情に戻る。
「そうですね……。まだ、好きなのかどうかはわかりません。ですが、たくさんお話ししたい方ならいます。正確な答えにならず申し訳ございません」
「い、いや!リコさんが謝ることなんかないよ!?ビックリだよね〜!こんな質問いきなりされたら……!も、もう遅いからそろそろ帰ろう!明日も授業があるし……!」
レンは気づいていないがリコは少しだけ寂しそうな表情を浮かべていた。
しかし、レンの言う通り明日から授業が始まる。
そのためには早めに休み、疲れを癒す必要があった。
リコはもう少しお話ししたいという欲求を抑え込み、レンの顔を見る。
「そうですね。また明日部活でお会いしましょう。おやすみなさい、レン君」
「うん……!また明日ね、リコさん」
二人は煮え切らない気持ちで分かれ道を進み、それぞれの自室へと帰っていった。
その日は疲れがドッと出たのだろう。
ベッドの上に伏せると、あっという間に朝になってしまったのだった。