残酷な描写あり
R-15
187 双子
急な声に振り向いたフォスターとカイルは目を見開いて驚いた。短い黒髪の青年が二人立っていたのだが、その二人は瓜二つだったのである。片方は眼鏡をかけていたので鏡が置いてあるわけではないとわかった。双子だ。飛翔神の町に双子はいないため、フォスターとカイルは双子を初めて見たのである。
「今日はどうしたのー? お友だちと外でごはん食べてるなんて珍しいじゃん!」
「ファイス、セレインさん明らかに嫌がってるよ」
「えー? そんな冷たいこと言わないよねー?」
「あたし、冷たいってよく言われる」
「そんなー」
珍しい双子にフォスターたちが呆気にとられていると、ファイスと呼ばれていたほうがリューナを見た。
「あー! 可愛い子が増えてるー! 誰だれー? 紹介してー?」
『てか、こいつ誰だよ』
ビスタークの突っ込みで我に返ったフォスターがセレインに訊く。
「あの、えっと、どちらさまで……?」
「………………はとこよ、あたしの」
はとこ。親がいとこ同士ということである。ニアタのいとこはいなかったはずだ。ということは、マフティロの血縁である。
「あ、そういえば、ティリューダさんがお兄さん二人いるって言ってた」
リューナが思い出したように呟くとファイスが食い付いた。
「うちの妹のこと知ってるんだー? これは縁があるねー! 運命かもしれないー!」
「え、あ、その」
余計なことを言ってしまったという感じに口をに手を当てながらフォスターに隠れるようにもう一つの手で袖を掴んできた。兄は慌てて口を挟む。
「あ、リジェンダさんの息子さんたち……ってことは、水の大神官候補ってことですよね?」
「一応ねー。僕はファイスール。ファイスでいいよ。で、こっちは弟のテレク」
「テレクエルです。ファイスがご迷惑おかけしてすみません」
弟のほうがしっかり者らしい。
「ほんと、迷惑だからどっか行ってくれる?」
「えー、セレインちゃん、みんなの紹介くらいしてよー」
「大体あたしのほうが二つ歳上なんだから『ちゃん』じゃなくて『さん』でしょうが!」
「だって親戚のお姉ちゃんでしょー」
「ほんと、いつもすみません……」
ファイスールのほうは笑顔だが、セレインは不機嫌が顔に出ている。テレクエルは申し訳なさそうな表情で気の毒だった。少し空気を変えようとフォスターは自己紹介をすることにした。
「あ、あの、水の都では大神官のリジェンダさんにはお世話になりました。飛翔神の町のフォスターです。こっちは妹のリューナで、向こうは友達のカイル」
「リューナです……」
「カイルです。みんなとは幼馴染です」
「あたしの母方のいとこみたいな子たちよ」
「みたいって?」
「血の繋がりとかないから」
「そうなんだー」
「じゃ、もういいわね」
皆の食事が終わったのを一瞥して、セレインが軽くため息をつきながら立ち上がる。
「じゃあ宿舎に行こう。船に揺られっぱなしで疲れたでしょ」
「僕たちも一緒に帰るー」
「一緒に来なくていいわよ!」
カイルが呟く。
「となると、俺だけ別行動かあ。宿の案内所ってどこですかね?」
「あ、じゃあ双子に案内してもらいましょ。よろしくね! あたしたちは行こ!」
「セレインさん、それじゃカイルが可哀想だよ……」
「わあ、リューナちゃんは優しいねー!」
言おうとしたことを先にファイスールから言われてしまったが、カイルもリューナに礼を言う。
「ありがとう、リューナ。助かったよ」
「ううん。どこに泊まるのかわからないとフォスターも困ると思うし」
「来たばかりで土地勘も無いからね」
「あれー? もしかして二人は付き合ってるのー?」
「いえ、違います」
リューナにあっさり否定されカイルの表情が少し曇った。
「ファイス、そういう繊細なことは聞くもんじゃない」
「そうよ。こういうのはにやにやしながら見守るもんよ」
「…………違うもん」
リューナはフォスターの袖を掴む手に力を入れ、周りに聞こえないよう小さく呟いた。
「じゃあとりあえずみんなで行くー?」
「なんであんたが仕切ってんのよ」
「だってセレインちゃん知らないでしょー、案内所の場所」
「う……」
「こっちだよ」
セレインとファイスールが口喧嘩のようなやり取りを横目にテレクエルが道案内をする。カイルが宿の紹介をされている間は近くのカフェの外の席で待っていた。セレインとリューナはファイスールのおごりである。セレインは食べたばかりなので飲み物だけだったが、リューナはしっかり焼き菓子を笑顔を浮かべながら二つ食べていた。
「美味しいね〜」
「俺は買って後で食べようかな。腹いっぱいだし」
フォスターは自腹で焼き菓子を一つ買って持ち帰ることにした。菓子の研究用である。
「美味しそうに食べるねー」
「食いしんぼうなのよね、リューナは」
「またおごってあげるから、一緒にごはん行こうねー!」
「……ええと、みんなと一緒でお願いします……」
人見知りのため警戒しているが、食欲には勝てないようで周りを巻き込むことでリューナは妥協したらしい。
「お前……知らない人に『美味しいごはん奢ってあげる』とか言われても絶っ対についてっちゃダメだからな?」
「い、行かないよ!」
「ホントかなあ……」
『こいつ、本当にやりかねねえからな……』
そこでカイルが戻って来た。
「お待たせ。紹介はしてもらったけど部屋の確保は出来てないから早速向かってもいいかな?」
「いいよー。でもカイルくんは何か食べたり飲まなくていいのー?」
「お腹いっぱいだし、お金も節約したいので」
「わかったー」
皆で席を立った。
「それに、どうせ食べるなら、またあのクッキー食べたいなあ」
「お前、あれそんなに気に入ったの?」
「うん……なんか、ハマったみたい」
「あのクッキー?」
ファイスールが話に割り込む。
「あ、はい。向こうの港町で旅商人から買ったんですけど、もう手に入らないかもと思ってます」
「敬語やめようよー。僕にはタメ口でいいよー。で、それってそんなに美味しかったのー?」
「俺も食べたけど、別にそんなに美味くはなかったけどなあ」
「なんか、俺だけハマっちゃって。でも手に入らないなら諦めるしかないけどね」
「そうだな」
テレクエルが立ち上がる。
「じゃあ、行こうか。そんな離れてないし」
「うん、行こうー」
カイルに宿の大体の位置を聞くとファイスールとテレクエルがまた案内を引き受けた。
「都は一通り見て回ったからねー。通りの名前で大体わかるよー」
「あたしより後から来たくせに……」
「だってセレインちゃんってー、あんま外出ないじゃん?」
「うるさい!」
「ここじゃないかな」
二人の口喧嘩を流してテレクエルが指したのは古くボロボロの建物だった。
「確かに安そう……」
「お前ホントにここでいいの?」
「いいよ。フォスター達が一緒だとこんなとこじゃリューナが嫌がるだろうけど、俺一人だし」
セレインとフォスターが難色を示してもカイルはどこ吹く風だ。
「でも寂しいからさ、食事くらいは一緒に食べたいな。毎回じゃなくていいから」
「まあ、朝はそんな時間無いだろうからな」
「うん、昼か夜で」
「神殿の中の食堂は部外者は入れないのかな?」
「あー、ダメだねー」
「病院の食堂なら入れるわよ。患者も使うから」
それを聞いたビスタークが難色を示す。鉢巻きはまだ手に持ったままである。
『それは警備が甘いってことじゃねえか』
「でも外で食べても同じだろ。妥協するしかないよ。リューナが食事するときは絶対俺が付き添えばいい」
「うん。お願いね、フォスター」
それを聞いた男性陣から声が上がる。
「行く! 通信石で連絡するから!」
「じゃあ僕たちもー」
「あんた達は来なくていいから!」
「えー。大勢いたほうが食事は楽しいよー?」
「まあ、大勢いるほうが悪い奴を近づけさせない気はするね」
「リューナはどうしたい?」
判断をリューナへ委ねることにした。
「うーん……きっと一人で部屋にずっといると寂しいから、大勢のほうが楽しいかもしれない……」
「リューナちゃん、優しいー!」
リューナへ愛想良くふるまうファイスールにカイルは警戒した様子で顔を引き攣らせている。リューナのほうは優しいと言われ恥ずかしそうであった。
「今日はどうしたのー? お友だちと外でごはん食べてるなんて珍しいじゃん!」
「ファイス、セレインさん明らかに嫌がってるよ」
「えー? そんな冷たいこと言わないよねー?」
「あたし、冷たいってよく言われる」
「そんなー」
珍しい双子にフォスターたちが呆気にとられていると、ファイスと呼ばれていたほうがリューナを見た。
「あー! 可愛い子が増えてるー! 誰だれー? 紹介してー?」
『てか、こいつ誰だよ』
ビスタークの突っ込みで我に返ったフォスターがセレインに訊く。
「あの、えっと、どちらさまで……?」
「………………はとこよ、あたしの」
はとこ。親がいとこ同士ということである。ニアタのいとこはいなかったはずだ。ということは、マフティロの血縁である。
「あ、そういえば、ティリューダさんがお兄さん二人いるって言ってた」
リューナが思い出したように呟くとファイスが食い付いた。
「うちの妹のこと知ってるんだー? これは縁があるねー! 運命かもしれないー!」
「え、あ、その」
余計なことを言ってしまったという感じに口をに手を当てながらフォスターに隠れるようにもう一つの手で袖を掴んできた。兄は慌てて口を挟む。
「あ、リジェンダさんの息子さんたち……ってことは、水の大神官候補ってことですよね?」
「一応ねー。僕はファイスール。ファイスでいいよ。で、こっちは弟のテレク」
「テレクエルです。ファイスがご迷惑おかけしてすみません」
弟のほうがしっかり者らしい。
「ほんと、迷惑だからどっか行ってくれる?」
「えー、セレインちゃん、みんなの紹介くらいしてよー」
「大体あたしのほうが二つ歳上なんだから『ちゃん』じゃなくて『さん』でしょうが!」
「だって親戚のお姉ちゃんでしょー」
「ほんと、いつもすみません……」
ファイスールのほうは笑顔だが、セレインは不機嫌が顔に出ている。テレクエルは申し訳なさそうな表情で気の毒だった。少し空気を変えようとフォスターは自己紹介をすることにした。
「あ、あの、水の都では大神官のリジェンダさんにはお世話になりました。飛翔神の町のフォスターです。こっちは妹のリューナで、向こうは友達のカイル」
「リューナです……」
「カイルです。みんなとは幼馴染です」
「あたしの母方のいとこみたいな子たちよ」
「みたいって?」
「血の繋がりとかないから」
「そうなんだー」
「じゃ、もういいわね」
皆の食事が終わったのを一瞥して、セレインが軽くため息をつきながら立ち上がる。
「じゃあ宿舎に行こう。船に揺られっぱなしで疲れたでしょ」
「僕たちも一緒に帰るー」
「一緒に来なくていいわよ!」
カイルが呟く。
「となると、俺だけ別行動かあ。宿の案内所ってどこですかね?」
「あ、じゃあ双子に案内してもらいましょ。よろしくね! あたしたちは行こ!」
「セレインさん、それじゃカイルが可哀想だよ……」
「わあ、リューナちゃんは優しいねー!」
言おうとしたことを先にファイスールから言われてしまったが、カイルもリューナに礼を言う。
「ありがとう、リューナ。助かったよ」
「ううん。どこに泊まるのかわからないとフォスターも困ると思うし」
「来たばかりで土地勘も無いからね」
「あれー? もしかして二人は付き合ってるのー?」
「いえ、違います」
リューナにあっさり否定されカイルの表情が少し曇った。
「ファイス、そういう繊細なことは聞くもんじゃない」
「そうよ。こういうのはにやにやしながら見守るもんよ」
「…………違うもん」
リューナはフォスターの袖を掴む手に力を入れ、周りに聞こえないよう小さく呟いた。
「じゃあとりあえずみんなで行くー?」
「なんであんたが仕切ってんのよ」
「だってセレインちゃん知らないでしょー、案内所の場所」
「う……」
「こっちだよ」
セレインとファイスールが口喧嘩のようなやり取りを横目にテレクエルが道案内をする。カイルが宿の紹介をされている間は近くのカフェの外の席で待っていた。セレインとリューナはファイスールのおごりである。セレインは食べたばかりなので飲み物だけだったが、リューナはしっかり焼き菓子を笑顔を浮かべながら二つ食べていた。
「美味しいね〜」
「俺は買って後で食べようかな。腹いっぱいだし」
フォスターは自腹で焼き菓子を一つ買って持ち帰ることにした。菓子の研究用である。
「美味しそうに食べるねー」
「食いしんぼうなのよね、リューナは」
「またおごってあげるから、一緒にごはん行こうねー!」
「……ええと、みんなと一緒でお願いします……」
人見知りのため警戒しているが、食欲には勝てないようで周りを巻き込むことでリューナは妥協したらしい。
「お前……知らない人に『美味しいごはん奢ってあげる』とか言われても絶っ対についてっちゃダメだからな?」
「い、行かないよ!」
「ホントかなあ……」
『こいつ、本当にやりかねねえからな……』
そこでカイルが戻って来た。
「お待たせ。紹介はしてもらったけど部屋の確保は出来てないから早速向かってもいいかな?」
「いいよー。でもカイルくんは何か食べたり飲まなくていいのー?」
「お腹いっぱいだし、お金も節約したいので」
「わかったー」
皆で席を立った。
「それに、どうせ食べるなら、またあのクッキー食べたいなあ」
「お前、あれそんなに気に入ったの?」
「うん……なんか、ハマったみたい」
「あのクッキー?」
ファイスールが話に割り込む。
「あ、はい。向こうの港町で旅商人から買ったんですけど、もう手に入らないかもと思ってます」
「敬語やめようよー。僕にはタメ口でいいよー。で、それってそんなに美味しかったのー?」
「俺も食べたけど、別にそんなに美味くはなかったけどなあ」
「なんか、俺だけハマっちゃって。でも手に入らないなら諦めるしかないけどね」
「そうだな」
テレクエルが立ち上がる。
「じゃあ、行こうか。そんな離れてないし」
「うん、行こうー」
カイルに宿の大体の位置を聞くとファイスールとテレクエルがまた案内を引き受けた。
「都は一通り見て回ったからねー。通りの名前で大体わかるよー」
「あたしより後から来たくせに……」
「だってセレインちゃんってー、あんま外出ないじゃん?」
「うるさい!」
「ここじゃないかな」
二人の口喧嘩を流してテレクエルが指したのは古くボロボロの建物だった。
「確かに安そう……」
「お前ホントにここでいいの?」
「いいよ。フォスター達が一緒だとこんなとこじゃリューナが嫌がるだろうけど、俺一人だし」
セレインとフォスターが難色を示してもカイルはどこ吹く風だ。
「でも寂しいからさ、食事くらいは一緒に食べたいな。毎回じゃなくていいから」
「まあ、朝はそんな時間無いだろうからな」
「うん、昼か夜で」
「神殿の中の食堂は部外者は入れないのかな?」
「あー、ダメだねー」
「病院の食堂なら入れるわよ。患者も使うから」
それを聞いたビスタークが難色を示す。鉢巻きはまだ手に持ったままである。
『それは警備が甘いってことじゃねえか』
「でも外で食べても同じだろ。妥協するしかないよ。リューナが食事するときは絶対俺が付き添えばいい」
「うん。お願いね、フォスター」
それを聞いた男性陣から声が上がる。
「行く! 通信石で連絡するから!」
「じゃあ僕たちもー」
「あんた達は来なくていいから!」
「えー。大勢いたほうが食事は楽しいよー?」
「まあ、大勢いるほうが悪い奴を近づけさせない気はするね」
「リューナはどうしたい?」
判断をリューナへ委ねることにした。
「うーん……きっと一人で部屋にずっといると寂しいから、大勢のほうが楽しいかもしれない……」
「リューナちゃん、優しいー!」
リューナへ愛想良くふるまうファイスールにカイルは警戒した様子で顔を引き攣らせている。リューナのほうは優しいと言われ恥ずかしそうであった。