なんばーわんとなんばーつー
あったーらしーいーあーっさがーきーたー
きーぼーのーあーさーーがーーー
きーぼーのーあーさーーがーーー
時間はだれにでも平等だ。
おうさまもまおうさまも、別れてしまったみんなにも、あたらしく出会ったみんなにも。
遠く離れたあの場所にいる人にも平等に、新しいいち日がこんにちわする。
わたしも同じ朝日を浴びる。この瞬間、わたしは生きてるぅって感じになるんだ。
「ってことでオトモダチになりましょ!」
「言ってる意味がわかりませんわ」
寝起き眼のあんずちゃんが、半開きの目のままぼそっとつぶやいた。
「あさだよ!」
「わかってます。んもう、こんな時間からうるさいですわね」
シェルター型のテント。見上げるあんずちゃんは、きっと日差しをバックに仁王立ちするグレースちゃんが映ったことでしょう。
どうだぁこーごーしーだろ?
「そもそも、わたくしたちはもうお友達ではなくて?」
もそもそと寝袋から這い出て彼女は言った。
光を求め灯されていた篝火はとうに消え、当たり一面に太陽の恩恵が降り注いでいる。
雨よけ用のテントだから地面がむき出しだ。ほかにも数人ここで寝泊まりしてる人がいて、ひとりの少女がおっきな声を出したばかりに皆様が覚醒ののろしを上げているっていうかちょっとまって。
「あんずちゃん――ッ!」
そのワード、わたしのおむねにトゥンクだよ!
「な、なんですの!?」
思わず抱きついた。そして世界の中心で叫んだ。
「すき!」
「ちょっと静かにしてくださいます?」
「ぉおう?」
うしろから数人の冷ややかな視線を感じ、あんずちゃんはわたしと寝袋を引きずってその場所を後にした。
「頼もしい性格をしているな」
渋いボイスでそう呟いたブッちゃん。キャンプ地近くの茂みから出てきたわたしに対しての言葉だ。
うーんすべて出しきった! スッキリ爽快な気分になりつつ、わたしは出迎えたブッちゃんのとなりでモゾモゾする少女に行動を促した。
「うぅぅ……せめて仕切りとありませんの?」
「いいからしてきなよ? だれもいないよ?」
「そういう問題じゃありませんのよ!」
そう言いつつ両手を股間に埋めて必死に耐えてる。いくらガマンしたところでその瞬間はやってきてしまうというのに。
生き物が生き物であるために必要な営みなのだ。食って飲んで寝て、起きたら出す。
すなわちトイレである。
(もう、焦れったいなぁ)
「おうちではフツーにしてるじゃん」
だれも見てないよ? ここキャンプ地から離れてるし。
「不可抗力ですわ! 本当ならきちんとした扉があるとこで」
「恥ずかしがることないじゃん。あ、もしかしてうんち?」
「違います! っていうかもっと表現ありますわよね!?」
「アンタら何してるのよ」
ふと振り向けば、そこにはいかにも魔女っ子ですよと言わんばかりのマジシャンハットを装備したおんなの子がいた。
「グレースの頼もしさに感心していたところだ」
「まあ、いっぱい旅してきたからねー」
「へぇ、どこから?」
意外にもドロちんが乗ってくれた。
「ヒガシミョーからさらに西」
「さらに西って、ヒガシミョー以西はなにもないド田舎じゃない」
よく生活できたわね。呆れるような憐れむような視線で少女は言った。
「そなの? ぜんぜんヘーキだったけど」
まあでも、ヒガシミョーの他の村は人も少ないしフラーみたいに市場も人が集まるような場所もなかったし、ドロちんが言いたいこともわかる気がする。
(実際オジサンやスパイクさんも言ってたしね)
なにもない国だって。
「あれ」
ふと気づけば、いつの間にあんずちゃんの姿が消えてる。耳を澄ますと茂みの奥でカサカサ人の気配がして、それと同時に液体が流れるような音も感じられた。
なるほど、勇気を出したんだねあんずちゃん!
(勇気のほかにもイロイロ出してそうだけど……うん)
それ以上はいけない。淑女たるグレースちゃんは粛々とオトモダチの帰りを待つのだ。
「もうすぐ開門する時間だな」
「この後はギルドに行って、おしごと完了の報告をすればいいんだよね?」
僧侶はうなずきで返答する。それから少し思案して、傍らの子どものような少女に顔を向けた。
「ドロシー、お主はあの旅団に所属しているだろう」
その先の言葉を読んで、しかし何も口にせず少女はただ彼を見返した。
「ウデは確かだ。とはいえ駆け出し冒険者には助けが必要だと思わないか?」
問われた少女はこっちを見る。上から下までねっとり見られる。
なになにファッションチェック? それなら私服でやろーよこれアサシンモードよ?
声がうるさすぎて忍べないともっぱら評判ですがなにか?
「まあ、アンタのお墨付きならウデは確かなんでしょうね」
(声のトーンがまったく信じてない風味だ!)
「いいわ。ウチが案内したげる」
しぶーい表情も添えてありがとうございます。それでも納得していただけたようで、ドロちんはまっくろ僧侶からの提案を受諾してくれた。
それに安堵する僧侶。何か言いかけたところで、うしろの茂みからガサガサと音がした。
「はぁ」
「あ、あんずちゃん」
試練を乗り越えた女騎士登場。こころなしか、少し頬が上気してる気がする。
「だれにも見られなかった?」
「余計なお世話ですわ。ところで何の話をしてましたの?」
「旅団に行くって」
甲冑に身を包んだ少女の頭にクエッションマークが浮かんだ。
おうさまもまおうさまも、別れてしまったみんなにも、あたらしく出会ったみんなにも。
遠く離れたあの場所にいる人にも平等に、新しいいち日がこんにちわする。
わたしも同じ朝日を浴びる。この瞬間、わたしは生きてるぅって感じになるんだ。
「ってことでオトモダチになりましょ!」
「言ってる意味がわかりませんわ」
寝起き眼のあんずちゃんが、半開きの目のままぼそっとつぶやいた。
「あさだよ!」
「わかってます。んもう、こんな時間からうるさいですわね」
シェルター型のテント。見上げるあんずちゃんは、きっと日差しをバックに仁王立ちするグレースちゃんが映ったことでしょう。
どうだぁこーごーしーだろ?
「そもそも、わたくしたちはもうお友達ではなくて?」
もそもそと寝袋から這い出て彼女は言った。
光を求め灯されていた篝火はとうに消え、当たり一面に太陽の恩恵が降り注いでいる。
雨よけ用のテントだから地面がむき出しだ。ほかにも数人ここで寝泊まりしてる人がいて、ひとりの少女がおっきな声を出したばかりに皆様が覚醒ののろしを上げているっていうかちょっとまって。
「あんずちゃん――ッ!」
そのワード、わたしのおむねにトゥンクだよ!
「な、なんですの!?」
思わず抱きついた。そして世界の中心で叫んだ。
「すき!」
「ちょっと静かにしてくださいます?」
「ぉおう?」
うしろから数人の冷ややかな視線を感じ、あんずちゃんはわたしと寝袋を引きずってその場所を後にした。
「頼もしい性格をしているな」
渋いボイスでそう呟いたブッちゃん。キャンプ地近くの茂みから出てきたわたしに対しての言葉だ。
うーんすべて出しきった! スッキリ爽快な気分になりつつ、わたしは出迎えたブッちゃんのとなりでモゾモゾする少女に行動を促した。
「うぅぅ……せめて仕切りとありませんの?」
「いいからしてきなよ? だれもいないよ?」
「そういう問題じゃありませんのよ!」
そう言いつつ両手を股間に埋めて必死に耐えてる。いくらガマンしたところでその瞬間はやってきてしまうというのに。
生き物が生き物であるために必要な営みなのだ。食って飲んで寝て、起きたら出す。
すなわちトイレである。
(もう、焦れったいなぁ)
「おうちではフツーにしてるじゃん」
だれも見てないよ? ここキャンプ地から離れてるし。
「不可抗力ですわ! 本当ならきちんとした扉があるとこで」
「恥ずかしがることないじゃん。あ、もしかしてうんち?」
「違います! っていうかもっと表現ありますわよね!?」
「アンタら何してるのよ」
ふと振り向けば、そこにはいかにも魔女っ子ですよと言わんばかりのマジシャンハットを装備したおんなの子がいた。
「グレースの頼もしさに感心していたところだ」
「まあ、いっぱい旅してきたからねー」
「へぇ、どこから?」
意外にもドロちんが乗ってくれた。
「ヒガシミョーからさらに西」
「さらに西って、ヒガシミョー以西はなにもないド田舎じゃない」
よく生活できたわね。呆れるような憐れむような視線で少女は言った。
「そなの? ぜんぜんヘーキだったけど」
まあでも、ヒガシミョーの他の村は人も少ないしフラーみたいに市場も人が集まるような場所もなかったし、ドロちんが言いたいこともわかる気がする。
(実際オジサンやスパイクさんも言ってたしね)
なにもない国だって。
「あれ」
ふと気づけば、いつの間にあんずちゃんの姿が消えてる。耳を澄ますと茂みの奥でカサカサ人の気配がして、それと同時に液体が流れるような音も感じられた。
なるほど、勇気を出したんだねあんずちゃん!
(勇気のほかにもイロイロ出してそうだけど……うん)
それ以上はいけない。淑女たるグレースちゃんは粛々とオトモダチの帰りを待つのだ。
「もうすぐ開門する時間だな」
「この後はギルドに行って、おしごと完了の報告をすればいいんだよね?」
僧侶はうなずきで返答する。それから少し思案して、傍らの子どものような少女に顔を向けた。
「ドロシー、お主はあの旅団に所属しているだろう」
その先の言葉を読んで、しかし何も口にせず少女はただ彼を見返した。
「ウデは確かだ。とはいえ駆け出し冒険者には助けが必要だと思わないか?」
問われた少女はこっちを見る。上から下までねっとり見られる。
なになにファッションチェック? それなら私服でやろーよこれアサシンモードよ?
声がうるさすぎて忍べないともっぱら評判ですがなにか?
「まあ、アンタのお墨付きならウデは確かなんでしょうね」
(声のトーンがまったく信じてない風味だ!)
「いいわ。ウチが案内したげる」
しぶーい表情も添えてありがとうございます。それでも納得していただけたようで、ドロちんはまっくろ僧侶からの提案を受諾してくれた。
それに安堵する僧侶。何か言いかけたところで、うしろの茂みからガサガサと音がした。
「はぁ」
「あ、あんずちゃん」
試練を乗り越えた女騎士登場。こころなしか、少し頬が上気してる気がする。
「だれにも見られなかった?」
「余計なお世話ですわ。ところで何の話をしてましたの?」
「旅団に行くって」
甲冑に身を包んだ少女の頭にクエッションマークが浮かんだ。