犬はだれでもこうだから
グレースは陽キャわんなのです
みんなをゲンキにするチカラがあるのです
みんなをゲンキにするチカラがあるのです
「あ、ああ」
まだ本調子でない我がパーティーの医者。彼からしても見上げる山脈を前に少したじろぎ、視線を目とちょっと下のほうとで行き来しつつも言葉を探した。
「そうだと思うが、なんだ、修道院に思い出でもあるのか?」
何かをごまかすような声色。それにツッコミを入れる前に、サンダーさんに詰め寄り四つん這い状態のベリーちゃんは自分の胸の中心に片手を当て、赤い服に身を包んだ胸をギュッと掴んでいる。目立つ色だったから、わたしたちは彼女を見失わずついてこれた。
「わからない」
深刻な顔。彼女は何かを思い出そうとしてるようだった。
「けど、修道院ってことばを聞いたとき、なんか、胸のあたりが苦しくなった……帰らなきゃ、助けなきゃって」
「それは、貴方がこの世界に来る前の記憶ですの?」
あんずちゃんが近寄り投げかける。騎士だけどわたしより小柄なあんずちゃん。もはや直立の彼女との身長差は一目瞭然だけど、こちらからは真逆に――そう、たとえばあんずちゃんがおかーさんで、ベリーちゃんが今にも泣き出しそうな子犬にも見えた。
「わからない。でも、どうしても思い出さなきゃいけない気がして」
シュンとする子犬。気のせいか、彼女の耳まで淋しく垂れているように見えた。
そんな彼女を元気づけてあげたい。わたしは背伸びして、彼女の顔と自分の顔を近づけた。
「わたしたちもそうなんだ」
「あなたも?」
「あなたじゃなくてグレースちゃん。はいどうぞ」
「……グレース、ちゃん」
(かわいい)
照れてる顔も、ちょっと背ける仕草も。
ずっとここにいたのかな。もしかしたら、他の異世界人どころかこの世界の人とさえ交流する機会がなかったのかもしれない。そんなことを思うと、彼女への愛おしさが溢れていく。
(だいじょうぶ、わたしはここにいるよ?)
「気付いたらこの世界にいて、誰もいなくて不安たっぷりで……手を差し伸べてくれる人がいなかったら、とても不安だよね」
大きな少女はこくりとうなずいた。
そして言った。
「かえりたい」
「どこに?」
「わからない……思い出せないの」
「異世界人ってのは皆そうなのか」
唯一の現地人が腰を上げる。それでもベリーちゃんの頭にぜんぜん届かない。彼は厚着のローブを脱ぎ捨て、その下にある緑のローブをパタパタと叩いた。
「アンタ医者でしょ? どうにかできないの?」
「年上を敬えガキんちょ」
サンダーさんにつられ、こんどは山脈少女が立ち上がる。
ヒマラヤがエベレストになった。
(ん?)
ヒマラヤ?
エベレスト?
(なんだっけ?)
「旅の途中異世界人と何度か会ったが、そのどいつも記憶の一部が欠けていた」
それは異世界人の中でも共通認識だ。問題はどうやって記憶を取り戻すか。
「診断してもどこにも異常はねぇ。テメーらも診たがまったく異常なし。あるといえば、異世界人はみんな身体能力に優れてるってことくらいだ」
それも知ってる。訓練を受けてるわたしたちは当然、日常を平和に過ごしていたチコちゃんやスティさんだって、この世界の人と比べたらすごく力持ちなんだろう。その身体能力もあって、カニちゃんは美しいポールダンスを披露してくれた。
「医療をもってしても、何か手立てはないのか?」
「今のところない。だがそのままで終わらせるつもりもねぇ」
チラリ。医者が僧侶と魔術師を、んーにゃ、この場合は錬金術師かな? その双方に目をやった。
「手が無いじゃなく、俺のウデがまだ足りねーだけだ。だが新しい知識と術を取り入れりゃ話は別」
「フッ、なるほどな」
合点がいったかのように、まっくろ僧侶は笑った。
「道理で、これまでの道中拙者にいろいろと質問をしてきたわけだ」
「うざ絡みの理由はそれだったの? めんどくさ」
対してまっしろ錬金術師は不満顔。それらを一瞥し、サンダーさんは不安顔のベリーちゃんに向き直った。
「すこし試してみるか?」
「え?」
医者から提示されたひとつの提案。大きな患者さんは、希望と不安が入り混じるような表情を見せていた。
「まずは気を楽にしてくれ」
その辺から拾ってきた、比較的キレイな赤いカーペット。それを下敷きに、ふたりの人間が向き合っていた。
ひとりは医者、もうひとりは患者。薄暗い空間のなか、互いにあぐらをかき静かな空間を演出している。見物人であるわたしたちに対しても、なるべく物音を立てず、存在を消すよう注意を促されております。
存在消去は得意技だけど、それと同時に好奇心がむくむくしてきた。これから何が起こるのか気になってしかたない。
「この蝋燭をジッと見るんだ……火が揺れるさま、こうこうとたつ音、垂れていくろうの雫、ただ静かに、穏やかに見続けるんだ」
「……」
空間に甘い香りが立ち込めていく。彼と彼女の間にある皿に液体が注がれており、そこから飛び出した紐にも火が灯っている。それが香りを発生させてるんだ。
(なぜか知らないけど、この香りを嗅いでると安心するというか……身体から力が抜けていくというか)
患者が腰を下ろしたその周囲に魔法陣らしきものが描かれている。我がパーティーのまっくろ僧侶曰く、それは回復魔法の効果を高めるものらしく、お医者さんは、いつの間に覚えていたのかひとつのスキルを発動させていた。
「この者の枷を取り払わん――スキル、催眠」
煌々とした紫色の光。それが対象者であるベリーちゃんの身体を包んでいく。彼女の目がトロンとしてきて、自らもの見ぬ傀儡になっていくような気がした。
「焦らずに――自分自身の深い部分を眺めるんだ」
「ふかい、ぶぶん、うッ」
「受け入れるんだ。そこは色々な思いが渦巻いている」
やさしくなだめるように、ゆっくり子をあやすように、そして、目の前の人間を深く陥れるように。サンダーさんは、徐々に脱力していく少女の目を見つめる。少女の目には、もはやサンダーさんしか映ってない。
彼のことばに従い、彼女はただ自分自身の深みへ堕ちていく。
「なにがみえる?」
「……やま……ゆき……そしてこれは、なに?」
その時、ベリーちゃんの瞳に少しだけ光が差した。
「ひとがたおれてる……わたしはそれをたすけて、ほえて、はしって人につたえて……わからない」
「叫ぶではなく、吠える?」
「うん……吠えた。わたしは吠えた。だから人がやってきて、わたしは……倒れた人を見守って」
少女が道に惑う度、術者がその方向を導いていく。
「そうやって人助けをした後は、ごほうびが待ってるんだ」
「ご褒美とは、どんな?」
「そと……そう、外で楽しく遊ぶ。雪山を走って、転がって……ボールを投げてもらった」
(なにそれ楽しそう!)
ガタッ。
ヒザと近くのイスがごっつんこ。
(えへへぇ~、めんごめんご)
白い目でこっちをみるドロちん、あんずちゃん、ブッちゃんにごめんなさいしつつ、はやる身体を押さえて見守っていく。
「そのとき、キミは楽しかったかな?」
「うん」
「うれしかった?」
「うん」
「そのとき、キミはどうしていたかな?」
「わたしは……たくさん吠えて、吠えて、吠えて」
「どうやって?」
「――」
どうやって。
この質問が彼女の身体を動かした。
「ん?」
むくりと立ち上がる。
サンダーさんはそびえ立つ壁を見上げた。
よく見ると、その顔は焦りの色があった。
「いや、いい。実際に行動しなくていい。これはキミの深層心理を――」
「うぅぅぅ」
はじめ、彼女の口からそんな吐息が漏れて、
「わん」
ささやかな声が漏れ出して、
「わんわん」
次第に大きくなっていき、
「わんわん!!」
全身で喜びを爆発させた。
「うわあ!」
巨大なメスが目の前のオスに覆いかぶさった。襲われた? いいえ、これはいっしょにあそぼ☆ の合図です。わたしにはわかる。
が、サイズ的にこれはヤバい。
「ベリーちゃん落ち着いて!」
「サンダーさん!? ご無事ですか!」
「ブーラー! はやくこの巨体をどかしなさいよ!」
「今やってる! クッ、スキル勇猛!」
身体強化。けど彼女は離れない。なぜなら彼女はのしかかったワケでなく――、
「や、やめろォ! ひ、や、やめ、くすぐった、いひひヒッ!」
目の前のおとこの人に馬乗りになり、その顔をペロペロ舐めまくってるから。
(って、え?)
いやいやベリーちゃん何やってんの!?
それはさすがにアレよ? 女性から男性だからセーフとは言えないわよ? っていうかサンダーさんの顔テカッてるぅ~これもういろんな意味で手遅れじゃね?
(んー、でもなんか、んー)
なんだろう。目の前で人が襲われてるのに何とも思わないっていうか、どっちかってと羨ましいというかわたしもやりたいっていうか――ハッ!
(バカバカ! なんでそんなこと考えちゃうのわたし! 人の顔をナメるなんてそんなことしていいワケが――わけ、がぁ)
うらやまけしからんわたしもやりたぁ、いや落ち着け正気に戻れ。
「ベリーちゃんどいてー! サンダーさんがしんじゃうー!」
「お、おれは大丈夫だ、それよりブーラー、す、スキルの無効化を頼む。それで何とかなるはずだ」
「わかった。スキル、浄化」
僧侶の手に光。それがベリーちゃんを覆っていた紫をさらに取り囲んでいき、それらと交わり虚無に消えていく。
「――ぁ」
それと同時に彼女の瞳に光が戻り、マウントにしたお医者さんを見下ろし、自分が彼の逃走経路を遮断していることに気づき、
「あ、あわあわわわわわわわわ」
彼女の目がグルグルになった。
まだ本調子でない我がパーティーの医者。彼からしても見上げる山脈を前に少したじろぎ、視線を目とちょっと下のほうとで行き来しつつも言葉を探した。
「そうだと思うが、なんだ、修道院に思い出でもあるのか?」
何かをごまかすような声色。それにツッコミを入れる前に、サンダーさんに詰め寄り四つん這い状態のベリーちゃんは自分の胸の中心に片手を当て、赤い服に身を包んだ胸をギュッと掴んでいる。目立つ色だったから、わたしたちは彼女を見失わずついてこれた。
「わからない」
深刻な顔。彼女は何かを思い出そうとしてるようだった。
「けど、修道院ってことばを聞いたとき、なんか、胸のあたりが苦しくなった……帰らなきゃ、助けなきゃって」
「それは、貴方がこの世界に来る前の記憶ですの?」
あんずちゃんが近寄り投げかける。騎士だけどわたしより小柄なあんずちゃん。もはや直立の彼女との身長差は一目瞭然だけど、こちらからは真逆に――そう、たとえばあんずちゃんがおかーさんで、ベリーちゃんが今にも泣き出しそうな子犬にも見えた。
「わからない。でも、どうしても思い出さなきゃいけない気がして」
シュンとする子犬。気のせいか、彼女の耳まで淋しく垂れているように見えた。
そんな彼女を元気づけてあげたい。わたしは背伸びして、彼女の顔と自分の顔を近づけた。
「わたしたちもそうなんだ」
「あなたも?」
「あなたじゃなくてグレースちゃん。はいどうぞ」
「……グレース、ちゃん」
(かわいい)
照れてる顔も、ちょっと背ける仕草も。
ずっとここにいたのかな。もしかしたら、他の異世界人どころかこの世界の人とさえ交流する機会がなかったのかもしれない。そんなことを思うと、彼女への愛おしさが溢れていく。
(だいじょうぶ、わたしはここにいるよ?)
「気付いたらこの世界にいて、誰もいなくて不安たっぷりで……手を差し伸べてくれる人がいなかったら、とても不安だよね」
大きな少女はこくりとうなずいた。
そして言った。
「かえりたい」
「どこに?」
「わからない……思い出せないの」
「異世界人ってのは皆そうなのか」
唯一の現地人が腰を上げる。それでもベリーちゃんの頭にぜんぜん届かない。彼は厚着のローブを脱ぎ捨て、その下にある緑のローブをパタパタと叩いた。
「アンタ医者でしょ? どうにかできないの?」
「年上を敬えガキんちょ」
サンダーさんにつられ、こんどは山脈少女が立ち上がる。
ヒマラヤがエベレストになった。
(ん?)
ヒマラヤ?
エベレスト?
(なんだっけ?)
「旅の途中異世界人と何度か会ったが、そのどいつも記憶の一部が欠けていた」
それは異世界人の中でも共通認識だ。問題はどうやって記憶を取り戻すか。
「診断してもどこにも異常はねぇ。テメーらも診たがまったく異常なし。あるといえば、異世界人はみんな身体能力に優れてるってことくらいだ」
それも知ってる。訓練を受けてるわたしたちは当然、日常を平和に過ごしていたチコちゃんやスティさんだって、この世界の人と比べたらすごく力持ちなんだろう。その身体能力もあって、カニちゃんは美しいポールダンスを披露してくれた。
「医療をもってしても、何か手立てはないのか?」
「今のところない。だがそのままで終わらせるつもりもねぇ」
チラリ。医者が僧侶と魔術師を、んーにゃ、この場合は錬金術師かな? その双方に目をやった。
「手が無いじゃなく、俺のウデがまだ足りねーだけだ。だが新しい知識と術を取り入れりゃ話は別」
「フッ、なるほどな」
合点がいったかのように、まっくろ僧侶は笑った。
「道理で、これまでの道中拙者にいろいろと質問をしてきたわけだ」
「うざ絡みの理由はそれだったの? めんどくさ」
対してまっしろ錬金術師は不満顔。それらを一瞥し、サンダーさんは不安顔のベリーちゃんに向き直った。
「すこし試してみるか?」
「え?」
医者から提示されたひとつの提案。大きな患者さんは、希望と不安が入り混じるような表情を見せていた。
「まずは気を楽にしてくれ」
その辺から拾ってきた、比較的キレイな赤いカーペット。それを下敷きに、ふたりの人間が向き合っていた。
ひとりは医者、もうひとりは患者。薄暗い空間のなか、互いにあぐらをかき静かな空間を演出している。見物人であるわたしたちに対しても、なるべく物音を立てず、存在を消すよう注意を促されております。
存在消去は得意技だけど、それと同時に好奇心がむくむくしてきた。これから何が起こるのか気になってしかたない。
「この蝋燭をジッと見るんだ……火が揺れるさま、こうこうとたつ音、垂れていくろうの雫、ただ静かに、穏やかに見続けるんだ」
「……」
空間に甘い香りが立ち込めていく。彼と彼女の間にある皿に液体が注がれており、そこから飛び出した紐にも火が灯っている。それが香りを発生させてるんだ。
(なぜか知らないけど、この香りを嗅いでると安心するというか……身体から力が抜けていくというか)
患者が腰を下ろしたその周囲に魔法陣らしきものが描かれている。我がパーティーのまっくろ僧侶曰く、それは回復魔法の効果を高めるものらしく、お医者さんは、いつの間に覚えていたのかひとつのスキルを発動させていた。
「この者の枷を取り払わん――スキル、催眠」
煌々とした紫色の光。それが対象者であるベリーちゃんの身体を包んでいく。彼女の目がトロンとしてきて、自らもの見ぬ傀儡になっていくような気がした。
「焦らずに――自分自身の深い部分を眺めるんだ」
「ふかい、ぶぶん、うッ」
「受け入れるんだ。そこは色々な思いが渦巻いている」
やさしくなだめるように、ゆっくり子をあやすように、そして、目の前の人間を深く陥れるように。サンダーさんは、徐々に脱力していく少女の目を見つめる。少女の目には、もはやサンダーさんしか映ってない。
彼のことばに従い、彼女はただ自分自身の深みへ堕ちていく。
「なにがみえる?」
「……やま……ゆき……そしてこれは、なに?」
その時、ベリーちゃんの瞳に少しだけ光が差した。
「ひとがたおれてる……わたしはそれをたすけて、ほえて、はしって人につたえて……わからない」
「叫ぶではなく、吠える?」
「うん……吠えた。わたしは吠えた。だから人がやってきて、わたしは……倒れた人を見守って」
少女が道に惑う度、術者がその方向を導いていく。
「そうやって人助けをした後は、ごほうびが待ってるんだ」
「ご褒美とは、どんな?」
「そと……そう、外で楽しく遊ぶ。雪山を走って、転がって……ボールを投げてもらった」
(なにそれ楽しそう!)
ガタッ。
ヒザと近くのイスがごっつんこ。
(えへへぇ~、めんごめんご)
白い目でこっちをみるドロちん、あんずちゃん、ブッちゃんにごめんなさいしつつ、はやる身体を押さえて見守っていく。
「そのとき、キミは楽しかったかな?」
「うん」
「うれしかった?」
「うん」
「そのとき、キミはどうしていたかな?」
「わたしは……たくさん吠えて、吠えて、吠えて」
「どうやって?」
「――」
どうやって。
この質問が彼女の身体を動かした。
「ん?」
むくりと立ち上がる。
サンダーさんはそびえ立つ壁を見上げた。
よく見ると、その顔は焦りの色があった。
「いや、いい。実際に行動しなくていい。これはキミの深層心理を――」
「うぅぅぅ」
はじめ、彼女の口からそんな吐息が漏れて、
「わん」
ささやかな声が漏れ出して、
「わんわん」
次第に大きくなっていき、
「わんわん!!」
全身で喜びを爆発させた。
「うわあ!」
巨大なメスが目の前のオスに覆いかぶさった。襲われた? いいえ、これはいっしょにあそぼ☆ の合図です。わたしにはわかる。
が、サイズ的にこれはヤバい。
「ベリーちゃん落ち着いて!」
「サンダーさん!? ご無事ですか!」
「ブーラー! はやくこの巨体をどかしなさいよ!」
「今やってる! クッ、スキル勇猛!」
身体強化。けど彼女は離れない。なぜなら彼女はのしかかったワケでなく――、
「や、やめろォ! ひ、や、やめ、くすぐった、いひひヒッ!」
目の前のおとこの人に馬乗りになり、その顔をペロペロ舐めまくってるから。
(って、え?)
いやいやベリーちゃん何やってんの!?
それはさすがにアレよ? 女性から男性だからセーフとは言えないわよ? っていうかサンダーさんの顔テカッてるぅ~これもういろんな意味で手遅れじゃね?
(んー、でもなんか、んー)
なんだろう。目の前で人が襲われてるのに何とも思わないっていうか、どっちかってと羨ましいというかわたしもやりたいっていうか――ハッ!
(バカバカ! なんでそんなこと考えちゃうのわたし! 人の顔をナメるなんてそんなことしていいワケが――わけ、がぁ)
うらやまけしからんわたしもやりたぁ、いや落ち着け正気に戻れ。
「ベリーちゃんどいてー! サンダーさんがしんじゃうー!」
「お、おれは大丈夫だ、それよりブーラー、す、スキルの無効化を頼む。それで何とかなるはずだ」
「わかった。スキル、浄化」
僧侶の手に光。それがベリーちゃんを覆っていた紫をさらに取り囲んでいき、それらと交わり虚無に消えていく。
「――ぁ」
それと同時に彼女の瞳に光が戻り、マウントにしたお医者さんを見下ろし、自分が彼の逃走経路を遮断していることに気づき、
「あ、あわあわわわわわわわわ」
彼女の目がグルグルになった。